抄録
「運が減った」や「運の量は決まっている」のように,運が資源のように語られる,いわゆる「運資源物語」は
現在の日本では地域や世代に限定されず,広く普及している。本研究では過去に移民した日本人が持ち込んだ「運
資源物語」が現在でも移住先で語られている可能性を探るために,南米4 か国に住む日系人および日本人24 名を
対象にした聞き取り調査を行い,その傾向を検討した。調査時期は2013 年から2018 年である。その結果,「運資
源物語」に関して,他者から聞いたり,そのような記述を見たりしたことがあるという経験を持つ者は10 名ほど
であり,語られる状況の内容自体は宝くじや人間関係など,日本で語られる状況と類似していた。しかしながら,
その頻度や状況などを吟味すると,現在の日本と同様に「運資源物語」が日系社会で語られているという傾向は
見られないと推測された。この理由について,日常生活における日本語自体の使用頻度などから考察された。