質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
不妊という経験を通じた自己の問い直し過程
治療では子どもが授からなかった当事者の選択岐路から
安田 裕子
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2005 年 4 巻 1 号 p. 201-226

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抄録
不妊に悩む当事者は,治療技術の進歩に期待を寄せる一方で,治療そのものや不妊であることに,日常生活や人生において傷ついている。本稿では,不妊治療では子どもをもつことができず養子縁組を考えた方9 組を対象に面接調査を行い,当事者の視点から不妊経験の多様性をプロセスとして捉えることを目的とした。その際,複数径路・等至点モデルという記述モデルを用いた。まず,不妊治療と養子縁組への関わり方によって選択岐路を4種類に類型化し,そのうち3 類型から各1 事例を抽出した。次に,3 つの代表事例について,選択に纏わる語りを5 次元に区分し,時間軸上に位置づけて不妊経験の径路を提示した。そして,選択の分岐点に着目し,それが当事者にとってどのような意味を帯びていたのかを記述した。最後に,複数径路・等至点モデルの意義について論じた。
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© 2005 日本質的心理学会
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