第四紀研究
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遺跡分布からみた完新世後期の濃尾平野における土砂堆積域の変遷
小野 映介海津 正倫鬼頭 剛
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2004 年 43 巻 4 号 p. 287-295

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抄録

完新世後期の濃尾平野における土砂堆積域の変遷について,低地の地形・地質と遺跡の分布や遺物の検出状況をもとに検討した.濃尾平野では縄文時代中期後葉(4,300yrs BP)以降,木曾川扇状地東部を中心に遺跡が分布するようになり,縄文時代後期末(3,000yrs BP)と弥生時代前期末(2,200yrs BP)の2度の画期を経て,西側と南側の地域にその分布域を段階的に拡大させた.各遺跡では,地表面下2m以浅の黒色有機物層やシルトを主体とした細粒堆積物層から遺物が出土しており,遺跡が立地して以降,洪水による堆積物の供給を受けにくい環境が継続したことが推定された.これらから,濃尾平野では完新世後期に木曾川の主流および土砂の堆積域が低地東部から西部へと移行するとともに,堆積環境の安定域が西部や南部へ拡大したことが考えられる.このような変遷過程は,養老断層を境に沈降する西下がりの傾動運動と対応しており,その影響を受けたものと推定される.また,縄文時代晩期(3,000yrs BP)以降における木曾川の顕著な西流傾向と海側の地域における土砂の集中的な堆積は,「弥生の小海退」に相当する海岸線の海側への急速な前進のおもな要因となったと考えられる.

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