抄録
本研究では,特別支援学校に在籍する自閉症児の指示への応答行動を促進するために,機能的アセスメントに基づいて消去を組み合わせない分化強化手続きを行い,その効果について検討した.アセスメントの結果,対象児は,教員からの指示に応答しないこと(不応答)で教員の反応を得ており,問題行動の機能として注目の獲得が推定された.そこで,指示への不応答および指示への応答行動両方に対して強化しながら,さらに1回の指示の場合と複数回の指示の場合でそれぞれ生起した応答行動を促進するために,異なる好みの音声言語反応を随伴し分化強化をした.支援の結果,標的行動が増加するとともに,個別指示の提示数も漸減した.対象児の個別指示に対する応答行動全般を強化したうえで,さらにより提示数の少ない指示に対する応答行動を分化強化でき る可能性が示された.