抄録
本研究は,知的障害特別支援学級における子どもの意思決定支援について,教師が求める活動における選択行動の指導方法から検討することを目的とした.自発的な活動の開始や要求が見 られない2名の対象児に対して,学級の日課や学習において,個別の指導計画に即して,活動経験はあるが,現在は選択行動が自発しない4つの選択機会を設定し,活動の内容や方法に関する選択物を2つ提示し,対象児の選択に教師が応じる指導を順次行った.多層ベースラインデザインに準じて評価した結果,両対象児とも,いずれの選択機会でも指導目標とする活動で自発的に選択し, 活動を開始し,従事するようになり,活動に関する要求も観察された.教師が求める活動において 子どもの意思決定を支援するためには,指導目標とする活動のなかに選択機会を用意し,子どもが 意思を表出し,教師が実現する指導を通じて,子どもが自らの働きかけにより環境が変わるという 経験をもつことが重要であることが示唆された.あわせて,個別の指導計画を通じた子どもの意思決定を支える環境整備の必要性に言及した.