発達障害研究
Online ISSN : 2758-9048
Print ISSN : 0387-9682
持続可能な療育システムと支援体制構築
─既存の資源・機関の機能化からのアプローチ─
肥後 祥治福元 康弘塚本 亜希城門 千代有村 玲香
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2022 年 44 巻 1 号 p. 36-40

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抄録
特別な教育的ニーズのある子どもやその保護者へ支援はさまざまな領域において実践が続けられていが,新たに顕在化してきた課題は,支援を必要とする子どもたちの制度設計を超えた増加とそれに対応していく社会的・ 人的資源の地域間格差であると考えられる. この実行委員会企画シンポジウム2では, 先の課題に取り組むにあったて異なるアプ ローチの可能性を模索することである.支援システムや支援体制を企画・設計する際,当然ながら担当者は,その時点での学術的・経済的・財政的な基盤に背景に成立した設計思想に影響を受けるが,多くの場合そのことは,担当者自身にはほとんど意識されない. その設計思想を自ら支持し,社会的にその思想の優位性が認められていればなおさらである.しかし,時間や時代の推移,地域間のもつ条件が異なってきても,設計思想は吟味されることはほとんどない.そして,当初採用された支援システムや支援体制の企画・設計に用いられた方法論や考え方を改良・工夫することで,システムや体制の構築の取り組もうとする営みが継続されているといえる.現在の設計思想で最も影響力があるのが施設中心のリハビリテーション(Institution-Based Rehabilitation:以下 IBR)であると本シンポジウムの企画者は考えている.これまでの療育システムと支援体制の企画・設計が専門家の存在と効率的なサービスの配布に重きをおくIBRの考えに基づくならば,より多くの病院や基幹療育センター,発達障害を対象とした特別支援学校,児童発達支援センターを設置し,より多くの専門家を養成していけばよいことになる.しかしこのような取組みは,近年わが国が志向しつつあるノーマライゼーションやインクルーシブ教育,地域生活と言った基本理念とは反する方向性をもつだけではなく,持続可能性において大きな問題を抱えており,先に挙げたような課題の解決は,現状では不可能である.特に鹿児島のように多くの離島や僻地を擁している地域において,このような取り組み方は,絵に描いた餅とならざるを得ないアプローチであろう. 社会的資源や地理的制約が厳しい地域においては,IBRに替わる設計思想を吟味する必要性があるが,先に述べたとおりこのような地域においてもシステムや体制の設計思想の吟味に対する焦点があてられることのないま ま,連携の方法論をはじめとするシステムや体制の目に見える部分への取り組みが提案されたり,役割を担う機関の設置を熱望したりするといった取組みが行われることがほとんどである.本シンポジウムでは,代替設計思想となりうる地域に根ざしたリハビリテー ション(Community Based Rehabilitation: 以下 CBR)に注目をしており,このアイデアが「持続可能性」の鍵であると考えている.そこで,CBRのアイデアと親和性の高い実践について,それぞれの成り立ちと展開,問題点等について議論するなかで持続可能な療育システムと支援体制構築のために必要なシステム設計の思想(パラダイム)や技術論について検討を行ってみたい
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© 2022 日本発達障害学会
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