抄録
本研究は学童期 ASD 児の情動調整方略の特徴を,参与観察法を用いて,調整成功場面と調整困難場面それぞれのエピソードから探索的に明らかにすることを目的とした.対象児は ASDの診断がある男児 3 名(平均年齢 =10.7)であった.その結果,調整成功場面についての分析より,学童期 ASD 児は日々情動が喚起され得るさまざまな状況に直面しては,自ら,あるいはときに大人の力を得ながら多様な方略を用いて調整を行う様相がみいだされた.そのなかで,自身が置かれた状況や思考,情動状態を独り言のように言葉に出す方略を用いることが調整の成功に至るきっかけになっていることが示された.一方で,調整困難場面についての分析より,学童期 ASD 児が示す「攻撃」には状況を変えて自らの情動を調整しようとする意味合いがあることが示された.そのため,学童期 ASD 児にとっては調整方略でも,一般的には不適応行動と見なされやすいと言う不
一致な状態が生じていることが考えられた.