日本シミュレーション医療教育学会雑誌
Online ISSN : 2436-4452
Print ISSN : 2187-9281
実践報告
ICLS講習会における症例による胸骨圧迫深さの変化
勝田 考信中島 理加トーマス ジェームス向井 邦晃鈴木 秀和平形 道人門川 俊明
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2020 年 8 巻 p. 59-62

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抄録
【目的】当シミュレーションラボでは毎年4回程度日本救急医学会認定ICLS(Immediate Cardiac Life Support)講習会を開いている。講習会において、VF/PulselessVT「以下PLVTと略す」、PEA/Asystoleのシナリオによってチームごとの胸骨圧迫の質が変化している事に注目し、それぞれの差異を調べた。 【方法】対象者は研修医10名、臨床検査技師4名、看護師15名、医師1名。 VF/PLVT、PEA/Asystoleのシナリオのチームごとの胸骨圧迫深さ平均値、及び5cm未満の胸骨圧迫の割合を測定した。評価はALSシミュレーター、アンブマン®2016アドバンス(アンブ社製、デンマーク)の評価機能により測定。 【結果】胸骨圧迫の深さ平均値はVF/PLVTでは5.53±0.54cm、PEA/心静止は4.94±0.81cmとなった。5cm未満の胸骨圧迫の割合はVF/PLVTは24.6%、PEA/心静止は47.0%、となった。深さ平均値の各有意差はVF/PLVT:PEA/心静止のp値=0.0297となり有意差が認められた。 5cm未満の割合に対する有意差はVF/PLVT:PEA/心静止のp値=0.0302となり有意差が認められた。以上によりPEA/心静止のシナリオの時に胸骨圧迫が浅くなり、5cmを満たさない胸骨圧迫の割合が増える事がわかった。 【考察】PEA/心静止のシナリオ時、胸骨圧迫が平均して浅くなりかつ5cmに到達出来ない胸骨圧迫の割合が増える事がわかった。胸骨圧迫の質が低下する理由の一つとして胸骨圧迫をおこないながら鑑別診断をする事が影響を与えたと考えられる。よって原因が明らかではないCPRでは胸骨圧迫の深さが浅くならないようにより注意する必要がある。
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