2014 年 14 巻 7 号 p. 275-282
両親媒性脂質分子は水中での自己集合により球状,板状,ファイバー状など様々な微細構造を形成することが知られており,その調製法の容易さからボトムアップ型ナノ構造体製造のためのビルディングブロックとして有望である。この自己集合体が組み上がっていくプロセスでは,水素結合やスタッキング相互作用などの非共有結合が駆動力となっているため,欲しいナノ構造を得るためには両親媒性分子の的確な分子設計が非常に重要である。一方,核酸塩基はDNA中で相補的核酸塩基対やスタッキング相互作用といった非共有結合部位をもち,DNAの二重らせん構造を形成,安定化する役割を担う重要な分子である。 したがって,核酸塩基部位を両親媒性脂質と組み合わせた分子は,自ずとDNAと類似の非共有結合能を持ち,精密な集合体を形成することが期待できる。本稿では,これら核酸塩基部位をもつ両親媒性脂質分子が自己集合により形成する多様なナノ構造体について紹介する。