抄録
本稿は、知識という統一的な分析視角から日米半導体産業の逆転の歴史を再考するとともに、日米の知識移転形態の相違における理論的根拠を提示することを目的としたものである。本稿は日米半導体産業の事例分析であるが、最終的に日米間の知識移転に関連したイノベーションの相違を説明するものとして情報の粘着性仮説を提示する。この仮説を用いると、情報の受け手と送り手それぞれの企業規模(大企業かベンチャー企業か)によって移転形態が異なることが示される。それによると、アメリカ半導体産業はそれぞれの移転パターンに適合する最も粘着性の低い(コストが低い)形態を利用していることが理解される。また、特許分析を通して、知識移転形態を探求した結果、アメリカのベンチャー企業は日本のベンチャー企業と比較して、人材流動が盛んであることが示された。このことがアメリカ半導体産業における知識移転を促す要因のひとつであると考えられる。