2016 年 111 巻 10 号 p. 658-663
ワイン用のブドウを夜間に収穫(ナイトハーベスト)すると,より優れた品質のワインが醸造できることが経験的に知られている。ブドウの温度が低いうちに収穫することで低温での原料処理が可能となり,酸化や微生物汚染のリスクを低減できるのがナイトハーベストのメリットだと考えられていた。しかし,筆者らのグループは,近年甲州の香気成分の一つとしても注目されているチオール系香気成分の前駆体に着目し,早朝に前駆体量がピークになることを明らかにしている。ナイトハーベストの意義を香気成分の面から明らかにした興味深い研究成果を解説していただいた。