日本醸造協会誌
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麴菌菌種の違いが芋焼酎の香味形成に及ぼす影響(第2報)香気成分と官能評価での差異
白石 洋平奥津 果優吉﨑 由美子二神 泰基玉置 尚徳和久 豊髙峯 和則
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キーワード: 芋焼酎, 麴菌, 香味形成
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2021 年 116 巻 1 号 p. 49-58

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抄録

芋焼酎の製造に用いられている,黄麴,白麴,黒麴を用いて,麴以外はすべて同一条件で行い,芋焼酎における麴が違うことで生じる香気成分及び官能評価の差異を検討した。 GC-MSによる香気成分は,黄麴製では一般的な芋焼酎香気成分を基本として,高級アルコールおよび酢酸エチルエステル,含硫化合物含量が高かった。白麴および黒麴製は類似した傾向を示している中で,黄麴製よりもアルデヒド類,テルペン類が多かった。白麴製と黒麴製の比較では,全体的に白麴製のエステル類の香気成分濃度が高かった。その中で,DL-2-メチル酪酸エチルが黒麴製と比較して大きな差異のある成分であった。黒麴製は低級脂肪酸エステル類の濃度が白麴製よりも低く,中鎖脂肪酸エチルエステルでは同等であり,サリチル酸メチルの濃度が白麴製と大きく異なっていた。また,黒麴製では白麴製と比較して,1-オクテン-3-オールが高い結果となった。1-オクテン-3-オール濃度の麴での差異8)および全麴仕込みによる白麴および黒麴製の差異9)から,黒麴菌由来のひとつの特徴であると考えられた。芋焼酎における白麴製と黒麴製の香気成分はこれらの濃淡,重厚さに関与する成分によって違いが生み出されていることが明らかとなった。 官能評価では,黄麴製の香りは華やか,麴の香り,焼菓子,草やハーブ様と指摘された。白麴および黒麴製は,共通して果実様,ロースト,ナッツ様といったコメントが多かった。白麴製は軽快,シャープのコメントがあり,黒麴製はオイリー,まろやか,クリーム等のコメントが特徴的であった。味のコメントは香りと類似した傾向を示し,白麴製ではドライ,バランスといったコメントがみられるのに対し,黒麴製では芳醇,重厚といったコメントが得られた。どの焼酎がどの麴を用いたものであるかのブラインドテストにおいても概ね利き分けが出来ていることが認められた。これまで,酒質に与える麴の影響については経験的に述べられてきたが,本研究により,麴の違いによる芋焼酎の香味の特徴的な表現が明らかとなった。

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