抄録
本研究では,デザイナが水晶体混濁状態の視覚特性に配慮しながら設計が進められる支援システムの開発を目的とし,これまでにヒト水晶体の分光透過率と散乱光強度を指標に水晶体混濁眼の色覚表現法について検討した.本稿では,検討した色覚表現法の妥当性検証のために,若年者と高齢者(白内障者)に対して実施した口答および質問紙による2色対比実験について記述する.口答による実験では,まずカラーマネジメントディスプレイ上に同一の色票を提示した.一方の色票は固定とし,もう一方の色票を変化させていく.協力者には,両色票が同じに見えないと判断したタイミングを口答により回答していただく.質問紙による実験では,カラーマネジメントディスプレイ上にランダムで2つの色票を提示した.協力者には,2つの色票がどれくらい同じに見えるのかを質問紙に記載の1~6のスケールにて回答していただく(1:違って見える,6:同じに見える).他方で,片眼白内障者に協力していただき,検討した色覚表現法の評価を得た.結果として,検討した色覚表現法の妥当性を示すには至らなかったが,片眼白内障者の実験から,ほぼ見えの表現は可能であることが得られた.