抄録
社会科における評価研究は,社会科で目指す学力形成や学力の実態調査研究,評価方法・手段や評価活動の仕方の提言,テスト問題の工夫など様々な領域やレベルでなされてきている。しかし,社会科固有の評価は何をどのようにすることなのか,実際の評価活動はどうするのか,理論と実践を一体化する評価方法論はいまだ確立していない。事実,社会科の評価方法論に基づく具体化は喫緊の課題とされてきたにもかかわらず,なぜ立ち遅れているのか。その原因は,学校教育に求める理念・理想としての教育評価と,一般社会で求められる知識・理解重視の選抜試験に反映される学力評価との乖離が指摘できる。また,文部科学省が示す観点別評価の前提となる学力モデルと社会科固有の学力形成とのスタンスをどのように詰めるのかが課題である。学校や教師が置かれた状況を踏まえ,学習評価の具体化をどのように図ればよいか,本稿で取り上げる各々の研究方法の特質と課題を参考に,社会科固有の評価の具体化のための議論が待たれる。とりわけ,筆者が提唱する各々の社会科学力観に応じた評価要素による学習の事実に基づく授業改善研究の推進が必要である。