2020 年 20 巻 01 号 p. 68-83
本稿は2 つの大きな柱からなる。一つは,筆者が実践した国際理解教育を小学校外国語科の授業内容として取り入れた授業案の提案である。小学校外国語科の主教材として提案されたWe Can! 1 ・2 の言語材料を活かし,学習内容(content)として国際理解教育を取り入れたカリキュラムの概要,使用した教材と使用の工夫,失敗例などをまとめた実践報告である。もう一つは,「この授業で学んだことがどんな学びにつながったのか」,児童の「相互文化的コミュニケーション能力(Intercultural Communicative Competence 以下ICC)*1」に関する調査報告である。この授業を受けた児童が授業を振 り返り,授業での学びがその後の学びにつながったのかについて,インタビューによって収集したデータを考察した。また,このような授業を1 年以上受けた児童とそうでない児童のICC の知識や態度の違いについてアンケート及びインタビューによって調査した。結果,言語学習については,中学校で「役に立った」ということが主に指摘されたにとどまったが,国際理解教育の内容については様々な「学びの広がり」があることが示唆された。ICC については,1 年以上受講した児童の中には「他者の視点から物事を眺める」「様々な手段で積極的に他者と関わる」姿勢が散見された。実践課題としては言語と内容のバランスをとって児童の長期的な成長を促すという視点でカリキュラム改善を行う必要性,研究課題としては児童の限られた語彙の多義性に注意する必要性があげられる。