抄録
フタバガキ科樹木は東南アジア熱帯地域において生態的・経済的に重要である。熱帯多雨林生態系管理および木材生産を持続的に行うためには、植栽樹木集団における遺伝的多様性の維持や、天然林と植栽林間における遺伝的分化の回避が不可欠である。本研究ではフタバガキ科樹木2種の植栽集団に保持されている遺伝的多様性を天然林のものと比較し、人工更新が及ぼす遺伝的な影響を評価した。
インドネシアの林業会社PT. Sari Bumi Kusumaが管理する植栽林で、Shorea leprosuaとS. parvifoliaの植栽集団5-6集団について1集団あたり約30個体の葉を採取した。また植栽林周辺の天然林より各種40-80個体を採取した。遺伝子型決定にはEST-SSR遺伝子座7座を用いた。両種ともに、植栽集団の遺伝的多様性は天然林の遺伝的多様性と有意な差はなかった。天然林と植栽集団間の比較において、遺伝的分化は見られなかった。この事は、現在の施業方法を用いれば植栽集団の遺伝的多様性を保持し持続的な木材収穫が可能であることを意味しており、著しい減少が懸念される熱帯多雨林の現状に明るい展望をもたらすものといえる。