2024 年 41 巻 p. 16-37
日本の町内会は、長く市町村より小さい小地域の自治の当事者として働いてきた。しかし近年、町内会の加入率は低下し、また運営の不合理についての批判などが高まっている。本研究は、台湾において日本の町内会と同様に小地域の自治管理を担っている「里」という単位、そこに働くリーダーやフォロアーの活動参加の動機や協働のメカニズムを明らかにし、日本の町内会と比較することで、合理的な地域自治管理の在り方を模索したものである。本研究のもととなるデータは、2011 年に台湾で1カ月半にわたって行った現地調査に基づく。 台湾の里には、批判されにくい正当性・合理性がある。またスタッフの動機は活動の活性を高めるだけでなく、リーダーの指導方針の批判的検証にも向けられる。活動は、全員に課せられる義務ではなく、有志に委ねられている。活動に様々な度合いで参加すること、また、参加しないことを選択できる。こうしたメカニズムはボランティア従事者に対する深い理解・高い評価と、政治的姿勢の表明をタブー視しない文化に裏打ちされている。