抄録
1、目的
生活設計を構成する領域には、大きく分けて(1)将来どういう生活を送りたいかというライフデザインの領域、(2)金銭やネットワークなどの生活資源を管理する領域、(3)リスクを確認し対策を行うリスク管理の領域の3つがあると言われている。
高校生の生活設計についての調査結果の分析から、上記(1)との関連である、仕事に対する具体的目標があることや家族形成への意欲をもつこと、さらに自分に対する肯定的な評価が、生活設計への積極性を高めることが示されている。さらに(3)との関連で、仕事や家族形成、病気や事故・災害への不安など、生きていく上で遭遇するかもしれないリスクを考えさせることも、生活設計への積極性を高めることが明らかになった。
そこで本研究では、ライフデザインとリスク管理それぞれに生活資源管理の視点を加えて、生活設計の授業モデルを考案し、そのモデルに基づいた授業を実践して、授業の効果を評価することを目的とする。
2、方法
以前より生活設計の学習題材として、リスクとその対策を取り入れた人生すごろく作りを取り上げてきたが、さらにライフコースの選択について考えさせることで、総合的に生活設計学習ができると考え、授業を計画した。
まず、リスクとは何か確認したのち、リスクとその対策を取り入れて人生すごろくを製作する。その後級友の作品を検討することで考えられるリスクを共有し、それらにどのような対策があるかを、2つの視点から(お金に関することとそれ以外のこと、個人でできることと社会保障制度)4グループに分類し、理解を深めることを図った。
続いて、すごろくのストーリーとしてどのようなライフコースを取り上げたかを挙げさせ、その理由を考えさせた。
この後、経済資源についての授業を実施した。4通りのライフコース(独身一人暮らし、既婚夫婦共働き、既婚子どもあり妻専業主婦、既婚子どもあり妻パート)について、それぞれの平均的な家計状況をシミュレーションし、預金額から、生活のゆとりを検討した。今回は市販されている家計管理用のシール教材を用いた。
3、結果
授業実践後、生徒の振り返りの記述、感想などから、授業の効果を検討した。すごろくで生徒が取り上げたリスクは、大きく分けて事故病気災害、失業倒産など職業に関わるもの、離婚など家族に関わるものに分類できたが、彼らが考えた対策は、貯金や保険など個人的な努力によるものがほとんどであった。すごろく完成後のまとめの授業でこの点に気付かせ、社会保障制度への理解を深めさせることができた。
また、生徒の考えたストーリーの多くは、夫が職業につき妻が結婚や出産で退職となるタイプであり、彼らはそれが「普通、一般的」と捉えていた。4通りのライフコースの経済資源についてのシミュレーションにより、生徒の多くは彼らの希望が経済面からみると実現が困難であることに気付き、現実的に考える必要性を認識できた。
リスクとその対策を取り入れた人生すごろく作りの授業により、高校生はリスクを知り、その対策としての生活資源について、個人の努力によるものだけではなく、社会保障制度について理解を深めることができた。またライフコースに経済資源の視点を取り入れることにより、生活の見通しを立てる上で様々な生活資源について考慮する必要性を理解することができた。