2022 年 73 巻 6 号 p. 306-320
本研究の目的は, 新型コロナウィルスの流行により在宅勤務の増加や家庭外からの育児サポートが受けられにくい特殊な状況下で, 初めての育児における夫の育児参加の阻害/促進要因を明らかにすることであった. 研究1では, 夫婦を対象にした半構造化面接を実施して, このような状況下での夫の育児参加を取り巻く変数間の関係を整理して仮説モデルを生成した. 研究2では夫のみを対象に質問紙調査を実施して, 仮説モデルの検証を行った. 本研究の結果, このような状況下において, 第一子に対する父親の育児参加の阻害/促進要因としては, 在宅勤務か否か, 子どもの笑顔や成長を肯定的に評価する機会があるか否か, そして妻からの夫の育児に関する肯定的な評価の伝達があるか否かという3点が挙げられた. 本研究の知見の適用場面は, 新型コロナウィルスの流行下に必ずしも限定されるものではなく, 在宅勤務が継続される場合や, 家庭外からの育児サポートが受けられにくい家庭において, どのように育児支援を行うかといった介入案のヒントになると考えられる.