本研究の目的は, 新型コロナウィルスの流行により在宅勤務の増加や家庭外からの育児サポートが受けられにくい特殊な状況下で, 初めての育児における夫の育児参加の阻害/促進要因を明らかにすることであった. 研究1では, 夫婦を対象にした半構造化面接を実施して, このような状況下での夫の育児参加を取り巻く変数間の関係を整理して仮説モデルを生成した. 研究2では夫のみを対象に質問紙調査を実施して, 仮説モデルの検証を行った. 本研究の結果, このような状況下において, 第一子に対する父親の育児参加の阻害/促進要因としては, 在宅勤務か否か, 子どもの笑顔や成長を肯定的に評価する機会があるか否か, そして妻からの夫の育児に関する肯定的な評価の伝達があるか否かという3点が挙げられた. 本研究の知見の適用場面は, 新型コロナウィルスの流行下に必ずしも限定されるものではなく, 在宅勤務が継続される場合や, 家庭外からの育児サポートが受けられにくい家庭において, どのように育児支援を行うかといった介入案のヒントになると考えられる.
【目的】高齢者を対象として① COVID-19による緊急事態宣言期間中 (2020年4月7日~5月21日) における生活習慣状況, 主観的健康感, 心理状況, 食品摂取行動の現状を把握すること, ②緊急事態宣言期間中の主観的健康感とその他の因子との関連性について検討することを目的とした.
【方法】大阪府S市近郊に在住の高齢者129名を調査対象者とし, 緊急事態宣言期間中及び期間外における生活習慣状況, 主観的健康感, 心理状況 (抑うつ状況), 食品摂取状況について自記式アンケートを実施した. 解析対象者は111名 (60歳以上70歳未満が15名 (13.5%), 70歳以上80歳未満が75名 (67.6%), 80歳以上が21名 (18.9%)) であった.
【結果】緊急事態宣言期間中に地域の知人や友人と交流する機会が週1回以上あった者は36.4%であり, 健康だと思っていた者は83.8%であった. 緊急事態宣言期間中に規則正しい食生活や運動, 生活のリズムを整えることができていた者はできていない者と比較し, 有意に主観的健康感が高かった. また, 緊急事態宣言期間中に抑うつ状態で無かった者も有意に主観的健康感が高かった.
【考察】緊急事態宣言期間中においても平時と大きな変化なく生活していたこと, 週2回以上の運動も実施できていたことが自己効力感を高め, 主観的健康感向上に繋がったと考えられた. 緊急事態宣言期間中における高齢者の生活を調査し, 把握できたことより, 今後の健康づくりへの支援に繋げていきたい.
本研究は, 人生100年時代を迎えて重要になる, 高齢期の「居住の管理」「住宅の維持管理」「生活財の管理」を, 「高齢期の住居管理」と捉えて, その構築を目指すものである. そのうち本報では, 高齢期の長期化を背景に, 将来への居住意識と住宅維持管理の実態を明らかにし, その課題と方策を探ることを目的とする.
前期高齢者を中心に, その前後の年齢層の居住割合が高い成熟した住宅地を対象に, 質問紙調査を実施した.
高齢者のみで暮らす世帯が半数以上をしめ, それらの多くは建築年数30年以上で, 耐震性や耐久性の不安や, 段差の不便などの問題を抱えた住まいに居住している. 長寿命化への備えのないまま後期高齢期を迎えた世帯については, 今後, 長くなる高齢期の住みづらさの問題とあとに残される住まいの処遇の問題が顕在化すると予想される.
居住の継続を考えるのであれば, 長くなる高齢期に備えた住宅維持管理が必要である. プレ高齢者に対し, 高齢期以降の住まいの選択肢を提示するとともに, 住宅維持管理を啓発, 誘導する働きかけが重要となる. 高齢期の住居管理を支援する情報提供や相談の機会を, 行政のバックアップによって提供することが重要である.
社会全体に人生100年のための住居管理への意識を定着させていく必要がある.
本研究は「日本男女大学生の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に対する認識及びマスク着用行動」について明らかにすることを目的とした.
(1) 男女群の比較 (t検定) では27項目中, 12項目に有意差が認められた. 12項目のうち11項目は女性の平均値が高かった.
(2) 「市販マスクのつけ心地」は, 女性の約4割が「良くない」, 男性の3割が「良い」と答えた (p<.001). 「マスクのつけ心地のよくない部分」は男女共に「耳ひもをかける部分」が約4割であった.
(3) 構造方程式モデリングを用いた全体 (n=252) の解析では, 『日常生活の変化』は, 『社会との距離』 (パス係数 ; 0.68), 『コロナへの危機意識』 (0.29), および『マスク性能情報』 (0.24) に関連していた.
(4) SEMにおける男女集団同時分析では, 男性では, 『日常生活の変化』は, 『社会との距離』 (0.50), および『コロナへの危機意識』 (0.30) に関連していた. 女性では, 『日常生活の変化』は, 『社会との距離』 (0.85), および『マスク性能の情報』 (0.39) に関連していた. 以上より, 男性より女性において『日常生活の変化』がマスク着用を含む行動に及ぼす影響が強いことが示唆された.
本研究では開放型暖房器具使用住宅を対象に, 居住者自身が温湿度および二酸化炭素濃度を把握し環境評価を行う介入により, 居住者の換気行動や室内環境に及ぼす効果を検証した. 開放型暖房器具使用時には, 窓開け換気の頻度は少なく, 二酸化炭素濃度は非常に高濃度となっていた. 介入後には開放型暖房器具の長時間使用や過暖房が抑えられていた. また, 二酸化炭素濃度と空気の汚れ感の関係について, 介入前よりも介入後には相関係数が高くなっていた. 空気の汚れは感じにくいものであるが, 測定値の把握によって空気の汚れを意識化しやすくなったことが分かった. 介入の効果として, 二酸化炭素濃度と空気の汚れの意識化が挙げられるものの, 換気行動の大きな変容はみられなかった. 換気行動を促し, その効果を持続させるためには, 効果的な換気方法を具体的に教示するなど, 介入手法を検討していく必要がある.