抄録
2型糖尿病は、我が国においても著しい増加傾向が持続しており、現在890万人が罹患しており、糖尿病予備軍も1,320万人と推計されている。糖尿病を発症すると糖尿病性慢性合併症の発症リスクが上昇するため、糖尿病予備軍や耐糖能正常者が糖尿病を発症しないようにすることが極めて重要である。糖尿病発症には生活習慣の悪化が関係しており、特に運動不足による肥満傾向が糖尿病患者の増加に拍車をかけている。糖尿病発症予防には生活習慣の改善が非常に有効であることが明らかになってきた。摂取カロリーの適正化や栄養バランスを取ることが重要である。また糖尿病を発症した場合には、早期に診断し、早期から治療を開始することが重要である。2010年7月より血糖とHbA1cを組み合わせることにより、1回の採血で糖尿病の診断が可能になった。またこれまで使用されてきたHbA1c(JDS値)が、2012年4月1日より通常(Hb1cで5.0~9.9%の範囲で)0.4高いNGSP値に変更となることとなった。1年間は併記することができる。
DCCT、UKPDSなどの大規模臨床試験の結果より厳格な血糖管理によって糖尿病細小血管症が抑制できることが示された。またUKPDSの長期追跡データや血糖管理研究のメタ解析より血糖コントロールによって心筋梗塞が抑制されることが示唆されている。しかも早期からの血糖への介入によって、平均20年にわたって合併症抑制効果が持続することもわかり、できるだけ早期から治療を開始することが望ましい。