総合健診
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39 巻 , 2 号
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原著
  • 林 務, 木村 緑, 渡邉 多代, 小笠原 英治
    2012 年 39 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     【目的】酸化LDLは動脈硬化の形成、伸展に関与する因子として注目されている。その一つであるMDA-LDLを無症候である健康診断受診者において測定して頸動脈超音波検査と比較し、健康診断における有用性について検討した。【対象】対象者は、2009年10月と2010年1月~2010年12月までの間に関東労災病院健康管理センターで脳ドックを受診した525名から脳血管疾患と冠動脈疾患の既往がある者を除外した男性203名、女性135名とした。【方法】検討した検査項目はMDA-LDL、LDL-C、HDL-C、TC、TG、およびMDA-LDLを各脂質検査値で除した値とし、頸動脈超音波検査で観察されたプラークをその内部形質と表面構造によってsoft、intermediate、hard、ulcerの4群に分類し、プラークを認めなかった場合を対照群として計5群の間で検査値の違いを比較検討した。【結果】プラークの内部に柔らかい脂質コアがあるとされるsoft群は対照群と比較してMDA-LDLが高値を示し、HDLは低値を示す傾向が見られた。また、soft群は対照群と比較して、MDA-LDLを各脂質検査値で除して相対的に比較した値も高値を示す傾向が見られた。【結論】LDLとTCだけで動脈硬化の状態について評価するのは不十分である可能性が示唆された。無症状の健診受診者においてもMDA-LDLを他の脂質検査と併せて測定することで、動脈硬化の状態をより詳細に評価し、個々の受診者に合わせて生活指導や治療に役立てられる可能性が考えられた。
  • 片山 友子, 水野(松本) 由子, 稲田 紘
    2012 年 39 巻 2 号 p. 267-276
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     がんは昭和56年以降、わが国の死因の第1位を占め、毎年30万人を超す人が死亡しており、今や最大の医療上の課題となっている。2007年、がん対策基本法が施行され、それに基づいて、まず政府レベルで「がん対策推進基本計画」が策定され、その後、各都道府県でも基本計画が策定されるようになり、がん対策の枠組みができ上がりつつある。しかし、欧米の乳がん、子宮頸がん検診受診率が70%以上であるのに対し、日本では20~30%と受診率が低い現状にある。このため、基本計画の全体目標の一つであるがん死亡率20%減少の実現に向け、がん検診受診率の達成目標を当面50%とすることが掲げられた。
     本研究では、がん検診受診率の向上により、がん全体で死亡率はどの程度減少するかについて、および2009年の部位別がん死亡数第1位である肺がんについて検討するため、必要な医療費としてのがん検診費用、一般診療医療費の試算を行った。また、検診率向上によりがん発見数も向上すると考えられるので、その際の医療費と、5年生存の場合の5年間の国民所得の増加額の試算を行った。その結果、がん検診受診率50%を達成したとしても、死亡率20%減少の実現には至らず、60%に引き上げる必要のあることがわかった。また、検診率向上によりがん発見数が増加し、早期発見に繋がると、医療費の節減効果が期待でき、5年生存者が増加するため、これらの生存者がすべて国民所得に寄与するものと仮定すると、国民所得も増加することが見込まれるが、受診率が50%に向上し発見がん数が0.1%であれば、国民所得から検診費用と早期発見医療費を減じた約16億円の増加が見込まれることが試算された。また、生存者のうち就労率が27%の場合、受診率50%、発見がん数が0.5%であれば、2億円の増加が見込まれると試算された。その際の検診費用は、ハイリスク対象者には、低線量CT検査を行ったものとした。また、早期発見に対しては胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術を実施するものとして、それに要する医療費を試算した。
  • 高橋 亮太郎, 奥村 健二, 大山 智鈴, 小川 晃子, 大野 正弘, 浅野 美樹, 田口 宣子, 鈴木 正之, 池田 信男, 室原 豊明
    2012 年 39 巻 2 号 p. 277-284
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     近年、血管内皮機能を非侵襲的に指尖で測定できるreactive hyperemia peripheral arterial tonometry (RH-PAT) が開発された。本研究で我々は、人間ドック受診者を対象にRH-PATを用いた血管内皮機能測定について検討した。当院の2日ドック受診者で脳心血管病の既往がなく投薬を受けていない男性120名(平均年齢53±9歳)を対象とし、2日ドックの検査項目に加え、アポリポ蛋白B100、空腹時インスリン、高感度CRPなどを測定した。また、上腕駆血開放後の動脈拡張反応を指尖容積脈波として検出するreactive hyperemia index (RHI) をEndo-PAT2000を用いて自動計測し、血管内皮機能とした。全例で所要時間30分でRHIの測定が可能であった。RHIの平均値は1.76±0.41あり、RHIは年齢、心拍数、HbA1c、アポリポ蛋白B100、総コレステロール、LDLコレステロール、non HDL コレステロールと有意な負の相関を示した。喫煙歴(packyears)と空腹時血糖値はRHIと有意には至らないものの負の相関の傾向がみられた。RHIを従属変数としたステップワイズ重回帰分析では年齢、LDLコレステロール、心拍数がRHIの独立した規定因子であることが示された。本研究の結果より、人間ドック受診者においてRH-PATを用いて測定した血管内皮機能は心血管病の危険因子との相関がみられ、初期動脈硬化のサロゲートマーカーとしての可能性が確認された。
特集
総合健診と最新ガイドラインupdate
  • 高橋 敦彦, 久代 登志男
    2012 年 39 巻 2 号 p. 285-294
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     日本人を対象とした大規模臨床試験の結果を含む多くのエビデンスが集積され、また、高血圧以外のリスクや他疾患を考慮した治療の重要性に基づき、日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが2009年に改定(JSH2009)された。
     リスクの層別化は、血圧分類名がI度、II度、III度高血圧に改められ、正常高値が加えられた。リスクは第1~3層に分類し、第2層にメタボリックシンドローム、第3層に慢性腎臓病(CKD)が追加されている。
     24時間にわたる厳格な血圧コントロールの重要性から、診察室血圧および家庭血圧それぞれの降圧目標が設定された。降圧目標値は、診察室血圧に関して心筋梗塞後患者、脳血管障害患者が加えられており、家庭血圧の降圧目標値はより具体的に設定された。
     治療の基本方針では、正常高値群でも糖尿病・CKDを含めた臓器障害や心血管病があれば高リスク群として管理することに変更されている。生活習慣の修正は、食塩摂取量の制限、減量、運動療法、アルコール摂取量の制限、果物や野菜の摂取の促進、飽和脂肪酸や総脂肪量摂取の制限、禁煙の重要性が示されている。
     降圧薬治療は、単剤もしくは併用使用を目的に最初に投与すべき降圧薬は、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5剤に変更された。
     24時間にわたる降圧の重要性が強調され、併用療法の必要性、合剤の使用によるアドヒアランスの改善などが示されている。
     本稿は、JSH2009の第1章疫学~第5章降圧薬治療および第7章他疾患を合併する高血圧(メタボリックシンドローム、特定健診・特定保健指導における血圧管理)を要約して紹介した。
  • 小田原 雅人
    2012 年 39 巻 2 号 p. 295-304
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     2型糖尿病は、我が国においても著しい増加傾向が持続しており、現在890万人が罹患しており、糖尿病予備軍も1,320万人と推計されている。糖尿病を発症すると糖尿病性慢性合併症の発症リスクが上昇するため、糖尿病予備軍や耐糖能正常者が糖尿病を発症しないようにすることが極めて重要である。糖尿病発症には生活習慣の悪化が関係しており、特に運動不足による肥満傾向が糖尿病患者の増加に拍車をかけている。糖尿病発症予防には生活習慣の改善が非常に有効であることが明らかになってきた。摂取カロリーの適正化や栄養バランスを取ることが重要である。また糖尿病を発症した場合には、早期に診断し、早期から治療を開始することが重要である。2010年7月より血糖とHbA1cを組み合わせることにより、1回の採血で糖尿病の診断が可能になった。またこれまで使用されてきたHbA1c(JDS値)が、2012年4月1日より通常(Hb1cで5.0~9.9%の範囲で)0.4高いNGSP値に変更となることとなった。1年間は併記することができる。
     DCCT、UKPDSなどの大規模臨床試験の結果より厳格な血糖管理によって糖尿病細小血管症が抑制できることが示された。またUKPDSの長期追跡データや血糖管理研究のメタ解析より血糖コントロールによって心筋梗塞が抑制されることが示唆されている。しかも早期からの血糖への介入によって、平均20年にわたって合併症抑制効果が持続することもわかり、できるだけ早期から治療を開始することが望ましい。
  • 佐々木 淳
    2012 年 39 巻 2 号 p. 305-312
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     脂質異常症の診断基準値・管理基準値は、わが国の冠動脈疾患発症率・死亡率が欧米に比べ低いため厳しくなっている。診断基準値はスクリー二ングのための基準値である。管理基準値は絶対値ではなく目安であり、薬物を使って基準を達成することを示しているのではない。禁煙、運動・食事など生活習慣の改善が治療の基本になる。薬物療法は日本人を対象にした大規模臨床試験で効果と安全性が確立された薬剤が推奨される。改訂ガイドライン2012年ではリスクの評価としてNIPPON DATA80リスクチャートを用いた絶対リスクの活用、高トリグリセライド血症ではnon-HDLコレステロール値を二次目標とすることに加え、包括的な動脈硬化性疾患の管理が示される予定である。
  • 塩 宏
    2012 年 39 巻 2 号 p. 313-322
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     今回の改訂版の特徴は、(1)新たに蓄積されたエビデンスを加え、エビデンスレベルとともに推奨度を記載するなど、日常診療でより使いやすい工夫がなされている。(2)臨床的エビデンスの有無を重視した。(3)高尿酸血症は性・年齢を問わずに、血清尿酸値が7.0mg/dlを超えるものと定義される。(4)血清尿酸値が種々の生活習慣病の有用な指標になるという知見を勘案し、7.0mg/dl以下であっても血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなるため、特に女性には潜在疾患の検査と生活指導が勧められることが新たに記載された。(5)高尿酸血症は尿酸クリアランスと尿中尿酸排泄量から尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、混合型に大別される。(6)尿酸クリアランス算出の体表面積補正に用いられる体表面積は、1.48m2から1.73m2に変更されている。(7)高尿酸血症の治療にあたっては、尿酸排泄低下型に尿酸排泄促進薬、尿酸産生過剰型に尿酸生成抑制薬を選択することを基本原則とする。(8)高尿酸血症の治療はほぼ変更点はないが、生活習慣の改善が最も大切である。(9)生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となり、肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待される。(10)食事療法としては適正なエネルギー摂取、プリン体・果糖の過剰摂取制限、十分な飲水が勧められる。このガイドラインが、高尿酸血症・痛風の臨床において有効に活用されることを期待する。
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