2012 年 39 巻 5 号 p. 620-626
特定健診・保健指導における精度管理の基本的な考え方は、いつでも、どの検査機関でも同じ結果が得られるということである。このために測定値の標準化と精度管理が必要となってくる。測定値の標準化については、特定健診項目すべての標準物質が健診開始前に作成され、これに基づいてトレーサビリティをとることで実践されている。また、地域あるいは関連病院間での測定値の共有化も図られてきている。精度管理については多くの施設が日本医師会などの外部精度管理調査に参加して、その成績もかなりよくなってきている。しかしながら、精度管理調査の成績がよい背景にカンニングなどがあるともいわれており、今後精度管理調査実施方法の見直しが望まれる部分がある。ただし、一番重要なのは本来の外部精度管理の意義を確認することであり、そのための啓蒙を行っていく必要があると考えている。
さらに健康診査で必要な正確な測定結果を得るためには、測定そのものの精度管理だけではなく、採取する前から測定した後までの管理が必要であり、そのため特定健診においては受診前、検体採取後分析前の手順についても指示されている。
血糖測定については従来解糖阻止剤としてフッ化ナトリウム(NaF)を用いることが一般的であったが、NaF単独での解糖阻止効果には速効性がなく、特定健診の手順では血糖検体は採血後冷蔵保存することになっている。近年、NaF にクエン酸を加えて解糖を速やかに抑える採血管が普及しつつあり、また、そのほかにも速効性のある解糖阻止剤も検討されているので今後これらの血糖の採取容器(解糖阻止剤)がより広く使用されていくようになると思われる。
特定健診項目の見直しとして、尿糖の必要性についての再検討があげられる。新しい項目としては、心腎連関のうえから、費用を考慮しないのであれば、尿マイクロアルブミン、血清シスタチンCが候補ではないかと考えている。