総合健診
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原著
喫煙習慣の変化が4年間の体重・腹囲・HDLコレステロールに与える影響
菊地 恵観子小田 夏奈江吉田 勝美千 哲三川久保 清
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2015 年 42 巻 2 号 p. 243-252

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抄録

【背景】禁煙には、体重増加の悪影響もみられるが、HDLコレステロール(HDL-C)の増加などの好影響がある。喫煙習慣の変化が、体重および腹囲の変化とHDL-Cの経年的変化を同時に検討している研究はない。
【目的】本研究は、喫煙習慣の変化が4年間の体重、腹囲およびHDL-Cに与える影響を検討し、禁煙指導の示唆を得ることを目的とした。
【方法】対象は2008年4月1日から2012年3月31日まで、4年間連続して健康診断を受診した男性18,289名(受診時年齢20~64歳)とした。2008年度から1年間の喫煙状況の変化とその後の喫煙状況により「非喫煙群」「禁煙群」「喫煙群」「喫煙開始群」の4群に群分け、体重、腹囲およびHDL-Cの4年間における変化量を分散分析にて比較検討した。
【結果】体重、腹囲およびHDL-Cは、喫煙習慣の変化した2008年度から2009年度の変化が大きく、体重および腹囲は禁煙群で有意に増加し(+0.87kg、p<0.001、+1.30cm、p<0.001)、喫煙開始群では体重は有意に減少したが(-0.54kg、p<0.05)、腹囲に有意な変化は認められなかった。HDL-Cは禁煙群のみで有意に増加した(+2.9mg/dL、p<0.001)。喫煙開始群ではHDL-Cの有意な変化は認められなかった。4年間の変化量は、禁煙群の体重および腹囲の増加が最も大きかったが(+1.57kg、p<0.001、+1.43cm、p<0.001)、HDL-Cの増加も他の群に比較して大きかった(+4.7mg/dL、p<0.001)。非喫煙群と喫煙群では体重、腹囲およびHDL-Cとも微増であったが、喫煙開始群では有意な変化は認められなかった。喫煙習慣の変化が体重、腹囲およびHDL-Cに及ぼす影響は、喫煙習慣の変化した1年目に強く、4年目にかけてゆるやかになることが明らかになった。
【結語】通常、体重や腹囲の増加はHDL-C減少を伴うが、本研究では、禁煙により体重や腹囲の増加が認められても、HDL-Cは改善することが示された。数年間禁煙を継続することが動脈硬化危険因子の改善につながると示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本総合健診医学会
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