総合健診
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原著
肺年齢と喫煙、生活習慣病の関係
市川 由理深草 元紀服部 加奈子武田 京子石田 也寸志
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 42 巻 2 号 p. 253-260

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抄録

【背景】近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の罹患者が増え、COPD発症の好発要因となる喫煙を指摘し禁煙支援する目的で日本呼吸器学会が提唱した「肺年齢」の有用性が期待される。当院でも肺機能検査にてこの肺年齢を提示し、受診者にとって身近なものとなりつつある。そこで禁煙支援を目的の一つとするのであれば、当院の人間ドック受診者を喫煙状況の差で肺年齢の差が明確に表されることが期待できなければならない。また肺年齢が生活習慣病に関係する因子に影響があるかどうか、傾向を知るところが目的である。
【対象】当院の宿泊人間ドック受診者のうち、肺機能検査を実施した者を対象とした。ただし呼吸器疾患を有する受診者は対象から除外した。また複数回受診している対象者は最終受診時のみの結果を用いた。
【方法】評価は肺年齢と実年齢との差(以降肺年齢差)を算出し、肺年齢差の比較は喫煙状況では現在喫煙、過去喫煙、非喫煙の3群に分け、また喫煙指数を600で分けたものでそれぞれ検討した。次に、生活習慣病と肺年齢差の関係について、肺年齢差を低値から順に4分割にしたときの血液検査(中性脂肪、HDL-cho、LDL-cho)、腹囲、血圧の生活習慣病の危険因子と比較した。
【結果】肺年齢差は男性は現在喫煙者が過去喫煙者または非喫煙者より大きく、女性では現在喫煙者が非喫煙者より大きい結果となった。男性では喫煙指数が高くなると、肺年齢差も大きかった。また男性で肺年齢差が大きい集団ほど中性脂肪および腹囲が有意に高値となった。
【考察】本研究で肺年齢は喫煙の有無、喫煙の程度と明瞭に相関することが改めて示唆された。また、腹部肥満は肺機能低下につながる要因として重要であり、肺年齢の提示が減量への動機付けとなり得る可能性が示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本総合健診医学会
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