抄録
機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule: AFTN)以外の甲状腺結節患者の甲状腺機能は正常であり、甲状腺腫瘤に気付かなければ無症状である。
甲状腺超音波検査(ultrasonography: US)は甲状腺結節の検出と評価には最も簡便で有用な検査方法である。本研究目的は、USによる結節を検出し、細胞診検査が必要な患者の選択、甲状腺専門病院への紹介をベースとして、病院からの返書と著者らの検査成績を比較検討し、早期診断と治療およびマネージメントの確立と患者のquality of life(QOL)の向上をめざすことにある。
2003年8月から2013年11月までの10年3カ月間に、健康ライフプラザを受診し、診察で甲状腺の触診により結節・甲状腺腫を認めUSを施行した「二次検査」3,109名と受診者自らが甲状腺検査(US・TSH)を希望した「オプション検査」674名の2群のUS検査成績につき後ろ向き研究を行った。合計3,783名中1,478例(39.1%)に結節、918例(24.3%)に嚢胞を認めた。
結節患者のうち566例を甲状腺専門病院へ紹介し、401例の返書を得た。悪性結節が74例、良性結節が327例であった。悪性結節74例中71例が乳頭癌(papillary thyroid carcinoma: PC)、3例が濾胞癌(follicular thyroid carcinoma: FC)と診断された。PC71例のうち30例は微小癌(thyroid papillary microcarcinoma: MC)であった。55例(PC52例とFC3例)が手術を受けた。低リスクMC19例は手術を行わず、経過観察となった。悪性結節74例中5例(6.8%)、良性結節327例中53例(16.2%)に橋本病の合併を認めた。USを受けた3,783例中多発嚢胞性甲状腺疾患が28例(0.7%)に認められた。
以上の研究結果から、著者らは本健診センターでの結節の早期診断とマネージメントを考案し、今後は以下の方針により診療を行うこととした。USにより結節を認め、「長径≧10mm、USC(ultrasonographic class: USC)≧3、Tg(thyroglobulin: Tg)≧1,000ng/mL濾胞性腫瘍を疑う例および、経過観察により結節が増大(≧5mm)する場合」は甲状腺専門病院へ紹介する。良性結節はUSによる経過観察を行う。一方TSHが異常な場合は、AFTN、潜在性甲状腺機能低下症(subclinical hypothyroidism: SHT)および無痛性甲状腺炎などによる甲状腺機能異常を考え、各種の甲状腺自己抗体などの精密検査を行い診断し、専門病院へ紹介するか経過観察する。