総合健診
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総合健診と予防医学的根拠
総論 正常値と異常値は何で決まるか
岡山 明
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 42 巻 2 号 p. 272-279

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抄録
 人の健康をどのように評価するか、どのように治療の必要な人を判定するかについて幅広く検討されてきた。健康診断の結果値に意味を与えるには大きく分けて二つの方法がある。一つは精度管理の方法を活用したもので集団の中での位置を表示して、相対的な状態を表現する方法である。全体の中で上に外れたたり、下に外れた部分を異常と見なす方法である。集団の中の位置づけが分かることで本人の動機付けを促すものである。こうした考え方はわかりやすいが、集団の平均から離れているからといって疾病のリスクとは直接関連しない。
 疾病のリスクは集団内部での位置だけで決まるのではなく、その集団そのものの占める位置でも決まってくる。集団全体がリスクの高いところにあれば、集団全体としてリスクが高い状態にあり、集団全体として改善を促す必要がある。
 もう一つは疫学研究の成果から得られた数々の情報(エビデンス)を整理して、リスクの大きさを把握した上で適切な対策を打つべき対象を決める方法である。血圧と脳卒中などの前向き研究などの結果を基に危険指標ごとに相対危険度や絶対危険度を計算し、集団としてどの程度の危険度があるか、また集団内のある位置にある個人にどの程度疾病の発症の危険度があるかを求めることが出来る。更に複数の危険指標の重複に着目して複数を持つ場合の疾病の発症リスクを計算できる。こうすることにより治療や対策の必要性が評価可能となる。最近の我が国の学会が定めている治療ガイドラインのほとんどはこうした疫学的な研究成果に基づいて決定されている。
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© 2015 一般社団法人 日本総合健診医学会
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