総合健診
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実践報告
松本市における胃がんリスク検診(ABC検診)への取り組み
奈須 喜美子唐澤 博之岩岡 秀子武田 正山村 光久杉山 敦百瀬 正青木 政子
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2016 年 43 巻 5 号 p. 584-594

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抄録

 上部消化管内視鏡検査を受けた人間ドック受診者を対象に、新しいHelicobacter pylori(Hp)抗体試薬であるスフィアライトH.ピロリ抗体・Jを用いて行なったABC分類の結果を参考に、松本市における胃がんリスク検診(ABC検診)のシステムを構築した。Hp抗体の測定には既存試薬より感度が良いとされる同抗体試薬を用いた。B群における未分化癌ハイリスクグループに対する検討では、B-1群に比べB-2群の萎縮性胃炎の割合が高いことを確認し、B群をB-1群、B-2群に細分類することとした。すなわち松本市におけるABC分類はA群、B-1群、B-2群、C群(C・D群)の4群である。A群を低リスク群、B-1群を中リスク群、B-2群とC群を高リスク群とし、B-1群以上を内視鏡による要精検群とした。B-1群は2~3年毎の内視鏡検査を、B-2群とC群は毎年の内視鏡検査を推奨した。A群の偽A群に対する対応では偽A群の混入率をできるだけ低く抑えるためペプシノゲン(PG)値(PGⅠ≦35ng/mLおよびPGⅠ/Ⅱ≦4.0、PGⅡ≧15ng/mL)による拾い上げを行なうこととした。リスク検診においては受診後の経年的な管理が重要になる。松本市では受診者が、自身の胃がんリスクの理解を深め内視鏡検査の動機づけになることを期待して「胃の健康度」手帳を導入、受診者全員に配布することとした。手帳には検診の結果、内視鏡検査の記録(毎年1回検査を行っても最低10年間の記録が可能)、除菌の成否が記載でき、内視鏡的管理が経年的に行なえるような体制作りを目指した。この検診システムを用いて平成26年度より胃がんリスク検診(ABC検診)を開始したが、今後はこの検診の有効性と問題点の検証が必要で、行政との協力のもと更に発展させていくことが大切である。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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