総合健診
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日本総合健診医学会 第44回大会
日本総合健診医学会 第44回大会・シンポジウム3 大腸がん検診のあり方:便潜血検査のピットフォールと新たなスクリーニング方法
便潜血検査による大腸がん検診の現状と課題~新しいスクリーニング法への期待を含めて~
松田 一夫
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2016 年 43 巻 5 号 p. 595-600

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抄録
 日本の年齢調整大腸がん死亡率は10数年前から減少しているが、米国や英国ではもっと以前から減少に転じており現在では日本よりも低い。また2015年の大腸がん死亡予測数を日米で比較するとほぼ同数である。日本の人口が米国の4割に満たないことを考慮すれば、これは極めて異常な事態である。米国で大腸がん死亡が減少した理由のひとつとして約60%の人が10年に1回の大腸内視鏡検査を受けていることが挙げられる。一方で日本やEU諸国では便潜血検査による大腸がん検診が行われている。
 便潜血検査(化学法)による大腸がん検診の有効性はRCTで証明されている。ただし便潜血陰性にもかかわらず自覚症状等によって発見される中間期がんが存在する。1995年から2002年に福井県内で実施された大腸がん検診受診者(延べ272,813名、OC-Sensorによる要精検率5.3%、精検受診率69.8%)を福井県がん登録と記録照合して検診後2年以内に判明した浸潤大腸がんを把握した結果、大腸がんの総数は409例で、そのうち中間期がんが76例(19%)を占めた。中間期がんは右側結腸に51%(39/76)が存在し中間期がん以外の31%(103/333)に比して有意に多かった(P<0.001)。
 便潜血検査による大腸がん検診の効果は確実であるが、問題は精検受診率が低く、受診率も低いことである。地域保健・健康増進事業報告によれば2013年に地域で実施された大腸がん検診の精検受診率は66.0%であり、国民生活基礎調査によれば2013年の40~69歳における受診率は37.9%に過ぎない。日本の大腸がん死亡を減らすには、当面は便潜血検査による大腸がん検診の受診率向上と精検受診率を改善する苦痛の少ない精検法が求められ、将来的には右側結腸がんにも感度が高いスクリーニング法に期待したい。
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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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