抄録
健康経営は、この数年ブームのように様々な雑誌で特集が組まれているキーワードであり、“国民の健康寿命の延伸”を主要テーマの一つとして挙げた第二次安倍政権による“日本再興戦略”がきっかけである。政策として、経済産業省や厚生労働省が中心となり、健康経営銘柄の指定や健康経営優良法人の認定など、様々プログラムが展開されている。企業が健康経営に取組むことの価値は、従業員の健康を介して、生産性を向上させることにある。健康経営に必要な要素は、①トップの基本方針、②社内体制、③健康管理プログラム、④評価・改善である。また、当然の基盤として、⑤法令遵守とリスクマネジメントが必要である。このうち健康管理プログラムには、リスクマネジメント型プログラムと支援・増進型プログラムがある。健康経営で成果を上げるためには、従業員の健康への投資がどのような形で成果を上げているかを評価し、継続的改善を図る必要がある。今後、「健康経営」の概念が日本社会に定着し、成果を上げるためには、いくつもの課題があるが、それらにはプログラム提供の側面、実践・評価の側面、制度の側面に分類できる。健康経営は、一人ひとりの従業員の持続可能性(Sustainability)を通じて、企業の持続可能性に繋がり、さらには日本社会の持続可能性に繋がるといった取組みといえる。