総合健診
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産業保健と総合健診
治療と職業生活の両立支援-連携による重症化予防とFitness for Work
武藤 剛横山 和仁遠藤 源樹大前 利道白田 千佳子根志 繭子福田 洋
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2018 年 45 巻 2 号 p. 336-343

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抄録
 「治療と職業生活の両立」とは、「病気を抱えながらも働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活を妨げられることなく、適切な治療を受けながら生き生きと就労を続けられること」と定義される。健診機関には、糖尿病やがん等の生活習慣病の早期発見・医療機関受療による早期治療とその継続支援を柱とする、重症化予防の役割が期待される。
 わが国の就労者における両立の実態は改善の余地が大きい。健診での要受診判定者の医療機関受療率と、その継続率の低さが最大の課題である。3大生活習慣病の健診後未受療率は、糖尿病で5割、高血圧で7割、脂質異常症では9割にのぼる。また受療後の1年継続率は24%にとどまる。
 平成28年に厚生労働省から公表された両立支援ガイドラインでは、「労働者の同意のもとでの産業医、保健師、看護師等の産業保健スタッフや人事労務担当者と主治医との連携」の重要性が強調されている。健康経営の機運の高まりに伴い、大企業では、産業保健スタッフや健康保険組合と、医療機関の連携による受療支援の先進事例がみられる。また中小企業の加入者が多い全国健康保険協会では、健診機関と共同で特定保健指導を実施することで、両立支援の強化を図っている。
 政府が推進する働き方改革には、両立支援推進をめざした、医療機関と職域の連携支援体制の整備や、産業医・産業保健機能の強化が盛り込まれている。特に、わが国の労働人口の過半数をしめる中小企業就労者に対しては、今後より一層、健診機関および併設の医療機関が産業保健機能を果たすことが期待される。連携のコストを考慮した推進システムを、社会全体で早急に構築することが望まれる。
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© 2018 一般社団法人 日本総合健診医学会
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