抄録
【背景】主な採血関連合併症として、痛みや出血、神経症状等の局所症状と、血管迷走神経反射(VVR)が挙げられる。当診療所では健診で年間約5万人の採血を行っているが、時に神経損傷事例や重篤なVVR発生を経験する。
【目的】当診療所における採血関連合併症の発生状況の把握と対策について、過去5年間の取り組みを報告する。
【対象】当診療所で2012~2016年に発生した採血関連合併症及びその間の取り組み
【方法】1発生した採血関連合併症事例のレビュー、2採血学習の強化、3報告用紙の作成、4採血環境の見直し
【結果】発生数は137件で、内訳は局所症状58件VVR76件(重複2件・その他5件)であった。賠償問題になった神経損傷事例の経験以後、採血に関する知識学習を強化し、年2回の学習会とテスト、標準採血法ガイドラインの配布、採用時の採血学習等を実施した。所内統一のアクシデント報告書から、採血合併症に関しては2014年12月以降別の報告書に変更した。その結果、VVR発生数が確実に集約出来るようになり、それまでの11件から65件と増加した。また局所についても穿刺血管等詳細を把握することが出来るようになった。巡回健診での時間当たりの採血人数の統計を取り、その結果で看護師体制を増員した。止血不良や腫脹等への対策として止血バンドを導入した。確実にアームダウン位がとれる採血台への見直しを現在取り組み中である。
【考察】報告書を作成したことで、発生状況の把握が格段に向上した。局所症状は、橈側皮静脈や橈側正中皮静脈からの採血時には発生していなかった。また合併症発生時の観察点や対応の標準化にも役立っている。研修会等で他機関の取り組みを知ることが具体的な改善につながっている。止血バンドの効果は大きく、現在では欠かせない物となっている。