2022 年 49 巻 2 号 p. 271-277
臨床の現場においてエキソームや全ゲノムシーケンスを用いた精密医療が指数関数的に成長し、多くのラボでシーケンシングを検査のポートフォリオに入れつつある。全ゲノムシーケンスのコストは1人当たり10万円を切るようになってきたが、その解析を行い、臨床的意義について解釈するためには、膨大なデータを迅速かつ正確に処理する必要があり、ここには、シーケンス自体のコストの数倍のコストがかかる。全ゲノムシーケンスを用いたクリニカルシーケンスなどで、先頭を走る米国の施設を中心に、いくつかの事例を紹介し、Genomics Englandのプロジェクトについても解説する。全ゲノム情報を用いた解析から、最終的に臨床の現場で用いられるレポート作成までを行うツールは種々開発されつつあるが、本稿では、Genomics Englandのプロジェクトにおいて評価を得た、Fabric Genomics社が開発したツールを中心に、クリニカルシーケンスの現状についても紹介する。