2022 年 49 巻 2 号 p. 278-288
遺伝関連検査は最近注目を集めている。消費者直結遺伝子検査(direct-to-consumer: DTC)も多く行われるようになっているが、DTCには問題点も残されている。これまでの私達の検討から、遺伝関連検査は適切に行えば予防医療に役立つ可能性があることが見いだされている。本稿では、このような取り組みを通じて作り上げていったインフォームドコンセントのための説明・同意文書と遺伝関連検査の結果説明方法を解説する。遺伝関連検査の説明・同意書には検査の目的、意義、方法、個人情報の保護など記載すべき種々の項目があるが、それぞれについて概説した。遺伝関連検査は個人のゲノム情報を扱うので個人情報保護は特に重要である。結果報告については、①健康診断・人間ドックの結果、②レアバリアント・コモンバリアントの解析結果、③家族歴の3つの資料を用い、原則として医師が対面で行う。結果報告書はかなりの分量があるが、説明は約40分から1時間以内で終了するようにする。レアバリアントが認められる場合は、専門家による遺伝カウンセリングと専門医による治療方針の決定、及びフォローアップが必要になる。これらはコモンバリアントの結果説明に先んじて行われる。コモンバリアントでは疾患、体質、薬剤応答の3つの結果を報告するが、疾患の説明では、疾患リスクが遺伝要因と環境要因で構成されていることをよく理解させる。そして、①疾患の遺伝学的リスクが高くても、環境リスクを減らすことで疾患の発症リスクを低下させることができること、②環境リスクの軽減は受検者の生活環境の改善で達成できること、すなわち自分自身の努力で疾患の発症をある程度コントロールできるようになる、ということをよく理解させることが大切である。