2023 年 50 巻 2 号 p. 284-291
近年、世界的に乳癌発症リスク層別化による乳がん検診の概念が注目され、リスク層別化乳がん検診が不利益の少ない、対費用効果で優れる乳がん検診をもたらすと注目されている。日本で行われた40~49 歳の無症状の日本人女性を対象とした7万人を超える研究参加者で行われた、検診マンモグラフィと補助的検診モダリティの乳房超音波検査を併用した乳がん検診の成績を比較した大規模な世界初のランダム化比較試験であるJ-START は、乳癌発症リスクの高い40歳代の日本人女性に対する超音波検査を加えた intensive screening のリスク層別化乳がん検診と解釈することが可能である。
日本の次世代乳がん検診は、乳房を意識する生活習慣というブレスト・アウェアネスの啓発を通して、有症状の女性は速やかに医師の診察を受けるという適切な医療受診行動を浸透させ、乳がん検診は無症状な女性が定期受診をするといった乳がん検診リテラシーを一般女性に浸透させることが重要である。そして、リスク層別化乳がん検診の概念も国民に啓発し、その導入に向けて世論形成とインフラ整備を整えていく必要がある。