2024 年 51 巻 2 号 p. 209-214
総合健診は我が国が世界に誇る健康管理システムである。一見健康な集団に対して大規模かつ定期的にスクリーニング検査を実施することで、多くの疾患を無症状のうちに検出し、予防・治療につなげることができる。しかし、対象集団のほとんどが健康であるため、有病率が極端に低く、精度の高い検査であっても偽陽性が多くなってしまうという問題がある。人工知能は、現在人間が行っているタスクの自動化および、検査から直接疾患を検出するシステムの構築を可能にし、健診で扱える情報の拡大や検査精度の大幅な改善を実現しうる。疾患の見落としを減らすだけでなく、不要な2次検査を減らすことで、医療費の削減や不要な身体侵襲・放射線被曝なども減らせる。また、機械は疲れることなく同じ計算を繰り返し実施できるため、健診のように、大規模な集団を対象とするにはうってつけだ。
このように、非常に有用な人工知能であるが、世間でまことしやかに囁かれている「医師の仕事を奪う」というようなことは、今しばらくは起こらないと考えられる。あくまで、優れた検査結果が追加で得られるのと同様であり、結果の解釈や患者の価値観に基づく次のステップの判断など、重要な医師の仕事を肩代わりすることはできない。我々、現代の医師には、AIの長所と短所を正しく理解し、上手に使いこなすことが求められている。