抄録
1999年以来, HDL-コレステロール測定が健診の場でも義務付けられたが, 低HDL-C値の管理基準やその指導根拠とすべき疫学的研究成果はいまだ乏しい。今回は, 中高年層の低HDL-C血症出現頻度と, 死の四重奏で代表される生活習慣病への低HDL-C合併頻度の検討を目的とした。【対象と方法】2001年4月~2002年3月の1年間に当センターの外来受診者13, 936名 (男性9, 527名, 女性4, 061名) を対象とした。【検討I】低HDL-C血症の男女別, 年齢層別の出現頻度を検討した。これらを中年層, 中高年層, 高齢層のABC3群に分け, 解析した。低HDL-Cは<40mg/dlとした。【検討II】低HDL-C血症出現群 (1, 951名) について生活習慣病 (肥満, 高血圧, 高脂血症, 糖尿病) それぞれの合併出現率を同様に対比検討した。【結果I】低HDL-C血症は, 女性に比して男性に有意に高頻度に出現した。中年以降の男性では, ABC 3群でそれぞれ19.6%, 17.8%, 13.7%, 女性では3.9%, 4.4%, 3.7%であった。【結果II】低HDL-C群での検討, (1) 肥満; 低HDL-C群では男女とも3群それぞれで肥満を高頻度に合併した。 (2) 高血圧; 中高年齢層男性に多く認めたが, 低HDL-C血症との関連は有意ではなかった。 (3) 高脂血症 (高TG+高Ch) ; ABC3群で男性に高頻度に出現した。低HDL-C群では男女とも同性被検者に比して有意に高頻度に合併した。高TG血症は低HDL-C群では男女とも高頻度に合併して出現し, 高TGと低HDL-Cの両者間には高い相関があった。 (4) 糖尿病; 低HD-C群では3群の男女ともに有意な高頻度の合併が認められた。【結語】低HDL-C血症は中高年男性の肥満を伴って多く見られ, 高脂血症, 糖尿病を高頻度に合併した。また, 逆にこれらの4病態像から見た低HDL-C血症の検討でも, その合併頻度の高いことが示された。中高年者の循環器病対策として低HDL-C血症の合併を視野に入れた指導管理が必要である。