抄録
人間ドックは本来健康な成人を対象とする。そのため, 測定対象者を用いる精度管理分析が病院検査部より容易である。今回, 平成12年9月~14年8月のドック受診者を対象に腫瘍マーカー (CEA, AFP, CYFRA21-1, PSA, CA19-9, CA125) の月別変動を検討した。対象は明らかな癌患者を除外した8, 316名で, PSAは50歳以上の男性3, 914名, CA125は女性2, 777名で検討した。全期間を通じての各腫瘍マーカー平均値はそれぞれ2.1 (非喫煙者1.7) , 4.2, 0.9, 1.2ng/ml, 5.8, 11.0U/ml, 陽性率は4.5 (1.6) , 2.5, 6.5, 3.8, 0.76, 2.1%であった。月別検討では, 全腫瘍マーカーに平均値の変動を認めた。陽性率はCEA, CYFRA21-1, CA19-9で変動を認めた。CEAは平成13年7月に測定エラーに起因する平均値と陽性率の小ピークを認めたが, 期間を通じて一定の傾向を認めなかった。CYFRA21-1は平均値と陽性率に2峰性の大きな変動を認め, 平成12年10月, 13年5月, 14年2月の平均値 (陽性率) はそれぞれ1.0 (9.1) , 0.5 (0.56) , 1.2ng/ml (11%) であった。CYFRA21-1の管理コントロールはこの間に明らかな変動を示さず, 変動原因は不明であった。CA19-9は平成14年3月以降に平均値と陽性率が約半分に低下したが, 測定キットのロット不良が原因であった。以上をまとめると, CYFRA21-1では受診時期により陽性率が大きく変動した。カットオフ値付近の値が多いと, わずかな測定上の問題が陽性率に大きく影響する。注意が必要と考えられた。他の腫瘍マーカーではCYFRA21-1ほどの月別変動を認めなかった。