総合健診
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加速度脈波の“血管老化スコア”を用いた動脈硬化リスク評価
―10年間レトロスペクティブ・コホートスタディ―
高田 晴子沖野 加州男
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2004 年 31 巻 2 号 p. 374-380

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抄録
我々は新しい加速度脈波 (APG) の計測器を開発し, スコア法による血管の弾力性の評価を試みてきた。スコア法における“血管老化スコア”は正常な老化過程からどの程度逸脱しているのかを推測する指標である。今回の研究の目的は, 疾病の発症頻度ではなく, 疾病発症以前の動脈の老化性変化をAPGで捉えることによって, 動脈硬化関連要因の相対リスクを求め, APG検査の妥当性を検討することである。45~64歳の549名を対象にして検討した結果, スコア異常者の中では, 血圧異常と“喫煙中または喫煙経験あり”がスコア正常者よりも有意に多かった (35.4%, 67.7%) 。さらに, 10年前にも受診していた247名について検討すると, 中性脂肪高値群で10年後にスコア異常を示したのは22.8%と正常群に比べて有意に多く, 相対リスクは2.5倍であった (p<0.05) 。本研究で, 仮説として動脈硬化関連要因の中に含めた4, 000Hz聴力低下群でのスコア異常は22.9%, 肥満群でのスコア異常は18.6%, 喫煙者でのスコア異常は16.8%で, それぞれ正常群に比べて有意に多い傾向であり, 相対リスクはそれぞれ2.2倍, 1.8倍, 2.0倍であった (p<0.1) 。結果から以下のように結論された。
1) 45~65歳の中高年のAPG検査において, 現状で高血圧者や喫煙者は動脈弾力性低下と判定されることが有意に多い。2) 35~55歳で高中性脂肪血症, 高音域聴力異常, 肥満, 喫煙などの要因を持つ者は, 10年後にはAPG検査において動脈弾力性低下と判定される可能性が高い。APGスコア法は, スクリーニングや患者の自覚を促す教育などに妥当性をもつと思われ, 生活習慣病の予防に一定の貢献をすることが期待される。さらに詳細な結果を得るためには, 今後はプロスペクティブなコホート・スタディが望まれる。
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