総合健診
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超音波スクリーニングにおける腫瘍と偽腫瘍所見の鑑別 (胆道)
岡庭 信司
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2004 年 31 巻 3 号 p. 490-498

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抄録

超音波は空気の存在によりその伝達が妨害される特性を持つことから, 胆道すべてをくまなく検索することは困難とされてきた。走査面から消化管のガス像を取り除き良好な画像を得るためには, 探触子の操作, 体位変換および呼吸の時相などを駆使する必要がある。さらに超音波検査特有のアーチファクトの存在およびその見分け方についても熟知しておく必要がある。
胆嚢の腫瘍性病変においては, まずその超音波像を有茎性隆起型, 広基性隆起型, 壁肥厚型に分類する。この分類は病変の性状診断のみならず深達度診断においても重要である。次に, 病変の大きさ, 表面構造, 内部エコー, 病変付着部の胆嚢壁の層構造などを評価する。これらの所見は偽腫瘍と癌あるいは腺腫との鑑別に有用である。
肝外胆管や十二指腸乳頭部では, 消化管のガス像に加えその複雑な解剖学的構造から病変の拾い上げがさらに困難となる。胆管拡張, 胆嚢の異常像, 胆管内の胆泥やリンパ節腫脹といった間接所見を拾い上げることは潜在する腫瘍性病変を推測するうえで重要である。特に, 胆嚢腫大およびdebrisと充満不良といった胆嚢の異常像は胆管閉塞の診断において最も感度が高く, 無黄疸例においても有用な所見である。
肝外胆管や十二指腸乳頭部の腫瘍性病変の性状診断には, 胆嚢の腫瘍性病変で述べた所見の評価に加え超音波による経過観察が有用である。経過観察の超音波にてその像が変化する病変は偽腫瘍性病変の可能性が高い。しかし, いかに努力しても癌と炎症性病変である硬化性胆管炎や自己免疫性膵炎に伴う胆管病変との鑑別は困難である。
超音波検査に精通し病変に対する正しい知識を持つことにより, 超音波検査は胆道のスクリーニングにおいて有効な手段となりえる。

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