総合健診
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超音波検査による乳癌検診の有用性について
―10年間の成績―
小田 憲一林 正博林 務木村 緑高井 一成久保 清史遊佐 マサ子宮田 朋子片山 真希
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2005 年 32 巻 2 号 p. 219-224

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抄録

人間ドックにおいて視触診に超音波検査 (US) を併用した乳癌検診を行い, 発見された乳癌症例を分析しUSの有用性について検討した。要精検率は3.7% (374/9, 978名) , 癌発見率は0.29% (29/9, 978名) であった。乳癌29例は全例USで検出した症例で, その最大腫瘤径は0.4~3.0cm (平均1.32cm) , 早期乳癌は26例 (90%) であった。触知例はUS発見29例中15例 (52%) , 精検マンモグラフィ (MMG) 検出例は結果の判明した22例中12例 (55%) であった。触知例/非触知例の平均腫瘤径はそれぞれ1.61±0.68cm/1.01±0.28cmで有意に非触知例で小さかった。また, MMG検出例/非検出例の平均腫瘤径はそれぞれ1.63±0.74cm/0.91±0.31cmで有意にMMG非検出例で小さく, USは視触診, MMGに比べ小腫瘤の検出に優れていた。しかし, 腫瘤径と乳房温存術施行例との関係では, むしろ乳房切除術施行例でやや腫瘤径の小さい結果となっていた。また, 組織学的リンパ節転移陽性例5例のうち4例は腫瘤径1.5cm以下の早期乳癌であった。1.5cm以下でリンパ節転移陽性例4例のうち3例は視触診, MMGともに検出されなかった。また, MMGで微細石灰化が検出された5例中2例はUSで腫瘤の描出のみであったが, 3例はUSでも点状高エコーが検出されており, USで低エコー領域内の石灰化を認識することはある程度可能であった。MMGは石灰化の検出に優れ非浸潤癌の発見率は高いが, 被検者の苦痛を伴うことも多く, また, 放射線被曝の影響がある。USは日本における技術水準や装置の普及率も高く, 本報告のように悪性度が高いといわれる浸潤癌を小腫瘤のうちに検出できる点で優れており乳癌検診の補助診断法として有用である。

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