著者が産業医をしている食品製造業工場で2002年度の定期健康診断の際に厚生労働省の健康調査に準拠したアンケートを行った結果, 65%の者が身体的疲労を, 58%の者が精神的疲労を, また, 53%の者がストレスを感じていることが示された。そこで, 疲労の内容を労働科学研究所が開発した蓄積的疲労徴候調査 (CFSI) によって解析した。個人集計表は個人にこれからの生活のアドバイスをするのには役立ったが, 日勤/夜勤, 男性/女性, 年齢 (35歳未満 (青年) /35歳以上 (成人) ) および職種 (製造/包装/その他) による差を統計的に調べることはできなかった。これは疲労感が個人的感情によるもので, 客観的基準がないことによる。しかし, 一応記載されたスコアの平均値のみから何らかの傾向の有無を調べた。
合計スコアの平均値の工場による差は少なかった。徴候別の平均スコアからは, 一般疲労感が最も強く, 次いで抑うつ状態, 気力の低下, 慢性疲労, 労働意欲の低下, 身体不良, 不安徴候の順で少なくなり, イライラ状態は最も少なかった。また, 職種別の合計スコアの平均値からは, 製造と包装にはほとんど差がなく, その他はこれらに比べて明らかに疲労は少ないことが分かった。さらに, 成人では, 工場別, 男女別, 日勤夜勤別で差は少なかったが, 青年では女性より男性に疲労感が強く, 勤務シフトでは工場によって分かれ, F1工場では夜勤より日勤者に強いのに対して, YおよびF2工場では日勤より夜勤者に強かった。
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