総合健診
Online ISSN : 1884-4103
Print ISSN : 1347-0086
ISSN-L : 1347-0086
運動耐容能評価のための新しい指標「交差脈拍数」
―加速度脈波のTaeがTeaと等しいときの脈拍数の意義―
高田 晴子高田 和夫
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 32 巻 5 号 p. 415-422

詳細
抄録

背景: 加速度脈波 (APG) とは指先容積脈波の二次微分波である。APGはa-, b-, c-, d-, e波の5つの成分波を持ち, a波頂点から次のa波頂点までの時間をTaa, a波頂点からe波頂点までの時間をTaeという。Taeは心臓の左室駆出時間 (LVET) に等しい。Taa-TaeはTeaと表現され, 前駆出時間を含む拡張時間に相当する。目的: 1) Taeと脈拍数の回帰式から心拍周期の男女の特徴と加齢変化を示し, 2) APGのTaeとTaeが等しくなるときの脈拍数である「交差脈拍数」を予測し, 予測された交差脈拍数が運動耐容能評価の新しい指標となり得るかを検討すること。対象: 20歳から69歳までの男性1, 461名, 女性724名の計2, 185名。方法: 1) 各対象について安静時のAPGを18秒間指先で測定して, 得られた波形のTaa, Tae, Teaを求めた。2) APGのパラメータを男女別, 年代別に比較した。3) Y軸をTae, X軸を脈拍数として男女別, 年代別に回帰式を求めた。4) 得られた回帰直線からTae=Teaとなる脈拍数, すなわち「交差脈拍数」を予測した。5) 予測された「交差脈拍数」と既存の運動強度簡易式および予測最大心拍予備能との関係を検討した。結果: 1) APGのTaeで表現したLVETは脈拍数にかかわりなく女性は男性よりも長い。2) 加齢に伴って同じ脈拍数におけるLVETは延長するが一方, 60歳を過ぎるとLVETの心拍周期における割合は低下する。3) 安静時のAPG測定により予測した「交差脈拍数」は年代別目標心拍数を算出する簡易式において, 各年代の運動強度70%の時の目標脈拍数に相当し, カルボーネンの式から求められる年齢ごとの予測最大心拍予備能の約52%の運動強度の目標心拍数に相当する。4) 予測された「交差脈拍数」は加齢により減少し, 運動耐容能の指標となり得る。結論: 交差脈拍数はAPGの安静時短時間測定で個々に得られるので, 年齢一律ではない個別に対応した運動目標心拍数設定や運動耐容能評価の指標となり得ると考えられる。

著者関連情報
© 日本総合健診医学会
次の記事
feedback
Top