総合健診
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血中LDL-コレステロール測定における直接法のすすめ
―前夜摂取した夕食による変動―
田中 越郎大峡 光里寿山 麻子工藤 香織本間 和宏大松 孝樹中澤 博江
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キーワード: 高脂血症, 血中濃度, 食事
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2005 年 32 巻 5 号 p. 429-433

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抄録
血中LDLコレステロール値測定にはFriedewaldの式による計算法に対し, 近年直接測定する方法 (直接法) が開発されたがその普及率はいまだ高くない。また, 健診前夜の夕食の種類による血清脂質濃度変化の詳細な検討はない。そこで直接法の有用性および前夜摂取した夕食による変動を検討した。健康な男女35人に全員同時に3回の試験を行った。第1回目の試験は午後7時に被検者全員が同一の普通食 (658 kcal) を摂取し以後は禁食とした。翌朝午前8時に採血を行い糖質と脂質濃度を測定した。LDL-コレステロール値は直接法と計算法とで求めた。1週後に第2回目として夕食に高エネルギー食 (普通食に比し糖質のみを増量したもの, 1, 011 kcal) を用い, 次の1週後に第3回目として夕食を絶食とし, 1回目と同様に8時に採血し糖質と脂質濃度を測定した。中性脂肪値, 総コレステロール値およびHDL-コレステロール値は3種の食餌問に有意差はみられなかったが, グルコース値は, 絶食 (84.4±8.6mg/dl) で普通食 (87.1±7.4mg/dl) , 高エネルギー食 (87.2±8.4mg/dl) に比べて有意な低下が見られた。LDL-コレステロール値 (直接法) は, 普通食に比べ高エネルギー食 (101.5±22.1, 104.3±24.1mg/dl) で高い傾向を示し, 絶食で有意な上昇がみられた (105.5±23.3mg/dl) 。しかし計算法値では, 絶食での有意な上昇は検出されず, 高エネルギー食 (99.7±24.7mg/dl) では逆に普通食 (105.1±23.9mg/dl) および絶食 (108.7±26.0mg/dl) よりも有意に低下する結果となった。また, 普通食および絶食では直接法値よりも計算法値が高くなる人が多かったのに対し, 高エネルギー食では逆に計算法値が低くなる人が多かった。以上より, 健診においてはLDL-コレステロール測定を直接法へ迅速に移行することが必要であり, 前日の夕食については標準的カロリーの食事を勧める記載が必要と考えられた。
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