抄録
更年期における脳ドックの役割について検討するために, 脳血管性疾患の予防に関与する心血管危険因子を検索した。対象は2001年3月から2004年2月の間に脳ドックを初回受診した女性2, 443名, 平均年齢51.8±11.7 (SD) 歳とした。45~54歳を更年期 (760名) に設定し, 44歳以下の非閉経期 (680名) , 55~64歳の前高齢期 (676名) , 65歳以上の高齢期 (326名) の4群に分別し, 脳ドック所見の年齢層別推移を分析した。頭部画像所見の年齢層別推移はMRIで無症候性ラクナ梗塞とMR angiographyによる脳動脈の描出度を検討した。ラクナ梗塞の有病率は非閉経期2.9%, 更年期7.8%, 前高齢期21.1%, 高齢期36.8%で, 前高齢期以後に有意に増加していた。脳動脈硬化所見は年齢依存的に増加していた。心血管危険因子と頭部画像所見の相関は, 年齢を調整した多重ロジスティック回帰分析で検討した。その結果, 無症候性ラクナ梗塞は肥満度, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 総コレステロール値, LDL-コレステロール値, 中性脂肪, 空腹時血糖値の上昇と独立相関を示した。脳動脈硬化所見は, それぞれ肥満度, 収縮期血圧, 拡張期血圧, 総コレステロール値, LDL-コレステロール値, 中性脂肪, 空腹時血糖値の上昇およびHDL-コレステロール値の低下と独立相関を示した。今回の検討で, 更年期からの生活習慣病の評価と早期管理が高齢期に生じる脳卒中の予防に重要であることが検証された。