抄録
2006年に国立病院機構九州ブロック内で、人工呼吸器装着患者の体位変換時に気管チューブが逸脱し、結果として患者が死亡に至った事故が2件発生した。いずれも体位変換時に、気管チューブが回路から牽引され、逸脱したことが一因と考えられた。これを受けて、国立病院機構九州ブロックでは、人工呼吸器装着患者の管理に関する研修会を開催し、回路からの牽引を避けるために回路を一時外して体位変換を行う手技を推奨した。研修会前では、体位変換を原則として回路を気管チューブから外して行うとした病院は、25病院中5病院であったが、2008年には24病院中21病院と増加した。体位変換手技の横断研究調査では、体位変換総数3,549回のうち73.9%で回路を外して体位変換を行っていた。体位変換の実施者の内訳は、1 回のみ医師が看護師に介助して行っていたが、残りの3,548回は看護職のみで行っていた。また、体位変換について、回路を気管チューブから外して行っている21病院に、実施上の問題点を尋ねたが、全病院とも問題ないと回答した。以上より、回路を気管チューブから外して行う体位変換は看護職のみで安全に行えることが示唆された。