組織の観察手法として主に光学顕微鏡を用いた免疫組織化学染色(IHC)やin situ hybridizationが用いられる。微細構造に迫る必要があれば電子顕微鏡が用いられる。本総説では,IHCの原理や手法,ナノスーツ-CLEM(光電子相関顕微鏡)法を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)観察に関して解説を行う。また,耳鼻咽喉科医にとって馴染みの深いp16 IHCに関して自験例も提示を行う。
IHCは抗原抗体反応を用いて,組織中の特定の蛋白質を染色する手法である。大まかな流れとしては,ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからの薄切,抗原賦活化処理,非特異的な反応を無くすための処理,一次抗体および二次抗体反応,発色,封入である。それぞれの条件設定が難しいことがある。
SEMは観察時に高真空を必要とするため,観察時の組織は乾燥させる必要がある。乾燥により組織は変形するため,変形を抑えるために様々な処理を要する。ナノスーツ法は,ハエの幼虫が高真空状態のSEMで生きたまま観察できることを利用した,SEM観察手法である。ナノスーツ溶液の塗布のみで,組織の乾燥なしに本来の構造を保持したまま,簡便にSEM観察が可能である。我々は,HPV-L1(カプシド蛋白)のIHC陽性部位をナノスーツ-CLEM法で観察しHPVウイルス粒子観察に成功した。また,他のウイルス粒子の可視化にも成功している。
ナノスーツ-CLEM法は病理学的な手法と親和性が高く,幅広く応用が可能であり様々な研究に取り入れることが可能である。