2017 年 120 巻 12 号 p. 1457-1466
アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎 (AFRS) は真菌に対するアレルギー反応を本態とする, 再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である. これまでに欧米では多数報告されているが, 本邦ではいまだ報告が少ない.
今回われわれは, 2011年4月から2016年12月までに大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診し, AFRS と診断した8症例の患者背景および治療内容・治療成績についての臨床的検討を行い, 本邦で過去に報告された AFRS29 症例との比較検討を行った. また, 術後治療として全身ステロイド投与の有効性が報告されており, 術後全身ステロイド投与の有無と再発率の関連についても検討した.
結果, 当科の慢性副鼻腔炎手術症例の3.2%が AFRS であった. 過去の報告と当科症例を合算すると, 年齢の平均値は45歳で, 69.7%が片側性病変であり, Ⅰ型アレルギーを示した真菌としてはアスペルギルスが最多であった. CTにおける高吸収域は全例に認めた. MRI T2 強調像における無信号域は11例中9例で認め, CT とともに術前診断に有効と考えられた. 過去の報告においては骨破壊症例が多く, 日常診療における疾患の認知が不十分である可能性が考えられた. また, 今回の検討では術後ステロイド投与の有無で再発率に差を認めなかったが, 治療に関しては今後さらなる検討が必要と考えられた.
AFRS は難治性疾患であり, 通常の慢性副鼻腔炎とは異なる取り扱いが必要である. 本疾患がさらに広く認知され,本邦における本疾患のさらなる研究の発展が期待される.