仮想空間をめぐる法的な課題には不明確な点が多く、インターネットの黎明期を思わせる状況にある。しかし、仮想空間には、特定の事業者が提供するプラットフォーム上に閉じた空間が構築されるという特徴があり、オープンなインターネットと状況が同じではない。プラットフォーム事業者が設定する利用規約や技術的な仕様(アーキテクチャ)によってルールが形成される側面も大きい。それに対して、仮想空間内のできごとが現実世界と接点を持つ場合にその関係を調整するためのルールは、今後、法的に検討していく必要がある。これは、一種の抵触法(空間際法)のルールであり、抵触の類型を区別しつつ、具体化していかなければならない。その際の基本的な原則は、「現実世界の優位」であると考えられる。現実世界で確立されている政策判断や価値判断は、仮想空間内の活動に関しても損なわれてはならず、他方で、仮想空間に対する影響を考慮して現実世界での行動が制約されることは、少なくとも当面は、想定しにくいためである。