2003 年 14 巻 3 号 p. 194-199
本研究ではβ-カロテン, カンタキサンチンおよびこれらにコール酸を添加したものをビタミンA欠乏ラットに投与して, レチノールの変換について結膜痕跡細胞採取法を用いて調べた.
β-カロテンとカンタキサンチンおよびそれにコール酸を添加したものと添加しないものについての正常細胞の発生と分化を確かめるため, 7区42検体について濾膜による結膜痕跡細胞を採取し, 染色後標本を作成し検鏡した.
検鏡結果は, 細胞の発生分化の損傷状態を形状から6段階に分けて概要を把握した後, さらに正常, 境界, および異常細胞数を分別し, 最終的には正常細胞数の多寡とレチノール生成量との相関性を調べた.
その結果, 正常細胞はβ-カロテン, 特にβ-カロテンにコール酸を添加したものは著しく多く, レチニルアセテート区もかなり多かった. カンタキサンチン区では相対的に少なく, カンタキサンチンにコール酸を添加したものはわずかに減少を示した. これらは各投与区のレチノール生成量にほぼ比例して正の相関を示した.
このことから結膜痕跡細胞試験が, カロテノイド投与によるレチノール生成を調べることに有効であることが示唆された.